レジェンド投手、江夏豊

 では、投手はどうか。復活も待ち遠しい、投手・大谷との比較で、しばしば名前の挙がるレジェンドと言えば、やはり江夏豊か。

 本人いわく「カーブは阪神に入ってから覚えた」。実質ストレート1本でドラ1指名まで勝ち取っているのだから、とてつもない。

 日本ハム時代を間近で見ている前出の愛甲氏は、現役晩年でも「凄かった」オーラを、こう表現する。

「カートに乗って登場する姿からして威圧感がハンパじゃない。今風に言うなら、あれぞ“ラスボス”。“顔で抑える”ってよく言うけど、晩年の江夏さんはホント、そんな感じだったね」

 その威圧感の凄まじさを物語る逸話もある。広島在籍時の巨人戦のことだ。同僚からそそのかされた中畑清が、彼との対戦で審判にボールチェンジを要求したことがあったという。

「土でボールをこねるのが江夏のルーティン。それを知る巨人ベンチは、何も知らない中畑をあえてけしかけたわけです。怒った彼はマウンドから降りて、“10年早は ぇんだ”と一喝。

 その形相に縮み上がった中畑は次に来たクソボールで空振り三振に倒れ、スゴスゴとベンチに帰ったとか」(前出のジャーナリスト)

黄金期の阪急の大エース・山田久志

 そんな江夏とは両極端な存在が、黄金期の阪急を支えた大エース・山田久志

 その折り目正しさは細部にまで至り、関係者によれば「試合前は鏡の前でベルトからはみ出る上着のたゆみまで、ミリ単位で整えていた」ほどだったとか。

「悲壮感すら漂う武骨な村田(兆治)さんを間近で見ていたから、余計に山田さんがスマートに見えてね。

 まるでスーツを着ているかのように、いつもビシッと格好がよかった。俺が中日に行ったときにちょうどコーチでいたけど、それこそ、ネクタイが曲がっている姿なんて一度も見たことがなかったしね」(愛甲氏)

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