生まれ変わり研究の第一人者

 生まれ変わりは哲学や歴史学、人類学、宗教学などの分野で古くから研究されてきたが、近年、医学的な見地から客観的、実証的に研究するグループが現れた。輪廻転生を超自然現象として捉えない彼らは、第三者的な科学者の立場で学術的な方法論を用いて生まれ変わり現象を明らかにしようとしている。

イアン・スティーブンソン(1918〜2007)

 医学博士。生まれ変わり研究の創始者で転生科学の父とも称される。1967年から2002年までアメリカのヴァージニア大学医学部精神科に創設された「The Division of Perceptual Studies(DOPS)」で、生まれ変わりの真偽を研究。アジアを中心とした40か国以上で、前世の記憶を持つ子どもとその関係者に綿密な面接調査を行い、延べ2300例もの実例を集めた。さらに、子どもの記憶や関係者たちの証言に食い違いがないか確認し、前世の家族についても調査した。

 スティーブンソン博士は、研究事例について作話説、自己欺瞞説、偶然説、潜在意識説、記憶錯誤説、遺伝記憶説、超感覚的知覚説、憑依説といった仮説を立てた。そして、自分が発表した事例レポートから各自が自分なりの結論を得るべきで、自分の解釈は重要ではないと述べたうえで、すべての仮説を検討した博士は「生まれ変わり説」が最も妥当な解釈だという見解を明らかにしている。また、人間の成長に影響を与える要因として、遺伝的要因、環境的要因とともに、生まれ変わりが考えられるのではないかという推測も示している。

ジム・タッカー(1960〜)

 医学博士、心理学博士。1996年からDOPSに参画し、現在も”生まれ変わり”の研究を行っている。スティーブンソン博士の研究データを踏まえたうえで、さらに約1100例の事例を調査した。

 スティーブンソン博士が検証した仮説はタッカー博士も検討しているが、前世の記憶を持つ子どもが持っているさまざまな特徴を自然に説明できるとして、やはり「生まれ変わり説」を最有力と見ている。また輪廻転生は科学的に説明可能だとして”意識”の問題を持ち出した。意識は脳が生み出したものではなく、量子論で語られるべきエネルギーであり、脳や肉体が死亡した後も意識は生き残り続けると考え、前世の記憶を保持したまま次の人格の脳に張りつくとしている。

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