■闘将・星野仙一の心に火をつけた田中将大

 星野仙一氏(故人)にも、忘れられない名采配がある。監督時代は“闘将”と呼ばれ、中日、阪神、楽天で通算17年、指揮を執った。楽天時代の13年には、巨人を破り、悲願の日本一を達成している。「星野監督はエースの田中将大(現ヤンキース)で決めようと、6戦目に先発させましたが、田中は160球で完投するも敗退してしまいます」(楽天番記者)

 迎えた第7戦。9回表、楽天3点リードの場面で、星野監督が動いた。「星野監督は、“ピッチャー交代!”と告げるや、球審に歩み寄り、耳元でこうささやいたと言います。“誰だか分かるか?”誰ですかと聞き返した球審に、いたずらっぽく微笑み、“田中や”とひと言。前日、160球を投げた田中をマウンドに上げたんです」(前同)

 前夜、田中は星野監督を訪ね、「明日も投げさせてください」と直訴していたという。闘志をむき出しにしたエースが、闘将の心にも火をつけたのだ。

 中日で8年指揮を執り、リーグ優勝4回、日本一1回(CSからの勝ち上がり)という成績を残したのが、落合博満監督だ。「落合采配の真骨頂を見たのは、07年の日本ハムとの日本シリーズです。中日の3勝1敗で迎えた第5戦、先発の山井大介が快投を見せ、8回まで1人もランナーを出さないパーフェクトゲーム。完全試合達成の期待が高まる中、落合監督は9回に山井の交代を告げたんです」(中日番記者)

 山井に代わりマウンドに上がったのは、守護神の岩瀬仁紀。場内からは、「山井コール」が鳴り響く異常事態となった。「中日のリードはわずかに1点。岩瀬を出す場面ではありました。ただ、山井は完全試合に王手をかけていた。普通の監督では、交代させることはできませんよ」(前同)

 名采配なら、この人を忘れてはならない。変幻自在のオーダーで敵を翻弄した仰木彬監督(故人)だ。仰木監督の下、近鉄の主力として活躍した解説者の金村義明氏が述懐する。「仰木さんは誰よりも早く外野に出て、選手と一緒に走ってました。走りながら、その日、調子の良い選手を見極め、オーダーを冷徹に考えていたんです。仰木さんの頭の中には、いくつものパターンのオーダーが用意されていましたね」

 これが“仰木マジック”の種だったのだ。

 仰木監督にはイチローの才能を開花させたという功績もあるが、同様に日ハムの栗山英樹監督は、大谷翔平(現エンゼルス)という“怪物”の生みの親だろう。「前代未聞の二刀流を許容できたのは、栗山さんだったからこそ。王さんも、ミスターも、“大谷は打者に専念させるべき”と言っていましたからね。大谷は栗山さんが監督だったからこそ、二刀流が成功したんですよ」(球界関係者)

 今季、ペナント連覇を目指す原辰徳監督にも、大監督の風格がある。「原監督の凄さは、その“非情さ”にあると言えます。忘れられないのが12年9月7日のヤクルト戦です。好機に凡退した村田修一(現巨人二軍野手総合コーチ)を2回の守備から交代させ、ベンチで“お前はもう、家に帰れ!”と怒鳴りつけたんです」(巨人番記者)

 村田は、オフにFAで鳴り物入りで獲得した大物選手だった。「翌日、村田は丸坊主にして球場にやって来ました。原監督は“心のゆるみ”を見抜いて、村田に喝を入れたんですよ」(前同)

 今シーズンも個性豊かな指揮官が集う。どんな名采配が飛び出すのか。(文中一部=敬称略)

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