■日常とSFが自然に溶け合う光景

「斉ボーグ優里」から1年後、乃木坂46の17枚目シングル『インフルエンサー』収録の個人PVで荒船は再度、バトルものをモチーフに個人PVを手がける。それが、西野七瀬主演「ばけねこのななせ」である。

https://www.youtube.com/watch?v=9ADxhVApz-0
(※西野七瀬個人PV「ばけねこのななせ」フルバージョン)

 生まれつき猫耳が生えている高校生・西野は、映画部の部長から自主映画に「化け猫」役で出演してほしいと懇願される。自身の属性ゆえのトラウマからその申し出を拒絶する西野だが、唯一の友達である野良猫に背中を押され映画出演を了承、それは彼女が仲間を得るための第一歩でもあった――。

「斉ボーグ優里」が心象風景としてのSFという解釈を示していたのと同様に、「ばけねこのななせ」でも、まさに想像力の具現化として荒船特有のVFX技術は活かされている。

 西野が出演する自主映画は、高校生が作った非常に質素な道具立てのものである。しかし、画面のアスペクト比が変わり、劇中劇として映し出されるその自主映画のカットにおいてのみ、ダンボール製だった敵は強靭なボディを持ち、周囲は炎に包まれる。

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