植田圭輔を共演に迎えたこのショートムービーは、放課後の教室で片思いの男子生徒が部活動から戻ってくるのを待つ中田の姿から始まる。一見すると、若いキャストを主役に据えた作品としては定番の、思春期の淡い恋を主題にした王道的なドラマのような佇まいである。やがて、植田が演じる男子生徒が教室に近づいてくる気配を感じ、中田は居住まいを正して緊張気味に待機する。

 しかし、植田が登場し画面内の主役が彼に切り替わると同時に、甘酸っぱい空気は一転、教室に不自然に置かれた「もの」を植田が訝しげに眺める場面へと移ろっていく。ここで、中田がその身体を通じて表現していたものが、本来魂を持つはずのない無機物であったことが明らかになる。

 中田演じる主人公は植田に思いを寄せ、「通学する植田の姿を毎日見つめていた」わけだが、それが客観的にどのような光景であるのかも、ドラマ後半の時点でようやく視聴者にも具体的にイメージできるようになる。それは、どのようにしても叶うことのない悲恋である。

 一方、植田の視点からすれば、中田が演じている「もの」が自分に恋をするなど勘づくはずもなく、むしろ無人の教室に唐突に置かれていたらホラー的な気味悪ささえ覚えるその「もの」に、なかば怯えながら一撃を加えて逃げていく。

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