モンスターが控える世界戦の展望

 レジェンドチャンピオンが口をそろえて歴代最強に推す、井上尚弥。

 それでは、彼がボクサーとして、どうすごいのか。3人のレジェンド王者の評価を聞いてみよう。

「自分の距離で戦う力が、すごい。絶対、相手に打たさないもんね。相手のボクシングをさせない。だから強いんですよ。

 コンディションや体を作ったりする能力も、天才的。後にも先にも出ないボクサーだと思うよ」(具志堅氏)

 連続防衛数の世界記録を持つ具志堅氏をして、そう言わしめる天才ボクサーなのだ。

「説明不要。現役のパウンドフォーパウンドでも、1位とか2位とかだから。

 勝ちに徹する、こそこそしたボクシングだと、あれだけの評価はされていないし。ボクシングの一番の華はKO。それを求められ、期待を上回る感じもスターですね」(畑山氏)

 そのスター性は、あの選手にも通ずるものがあると畑山氏は続ける。

「ボクサーとして持つべきものは、すべて持っている。野球で言えば、大谷翔平クラスの選手だよ。二刀流じゃないけれど、まさに漫画の世界のことをやっている」(前同)

 井上はボクシングの技術もさることながら、日々の努力に関してもメジャー級。

「何がすごいかというと、日頃の行いの積み重ねですよ。誰もマネできないぐらいのトレーニングをしているから結果が出ている。

 体つきを見れば分かる。シンプルですよ。才能だけではない。努力です。技術的にもすべてが世界トップレベル。スピード、パンチ力、タイミング、足の運び、距離感などすべて」(亀田氏)

 一方、そんな井上と5月6日に対戦するルイス・ネリは、どんな選手なのか。

「戦績は35勝(27KO)1敗。積極的に前に出ながら繰り出すパワフルな連打を武器に、バンタム級とスーパーバンタム級の2階級を制覇。山中慎介にKOで2連勝したことでも知られます」(ボクシング担当記者)

 しかし、1戦目はドーピング検査で陽性反応(処分はなし)、2戦目は大幅な体重超過の騒動を起こしている。“悪童”と呼ばれ、今やボクシング界のヒール的な存在だ。

 だが、その実力は、井上が所属するジムの大橋秀行会長も「危険な相手なのは間違いない」と警戒するほど、確かなものだ。

 では、約5万人の観衆が見守るであろう東京ドーム決戦の勝敗はどうなるのか、3人に占ってもらった。

 まず亀田氏は、井上の圧勝と予想する。

「ネリでは勝てない。やってるボクシングのレベルが違い過ぎる。井上のKO勝ちでしょう。確かにネリも強いけど、もろさがある。

 あれぐらいのパンチなら井上はカウンターを合わせていくと思う。タイミングが合えば、早々に倒すかもしれない。1ラウンドKOもありうる」

 続いて具志堅氏も、亀田氏と同じく、井上の圧勝を予想する。

「ネリの粗いパンチを一発でももらわなければ、井上のペースになると思う。彼なら、ネリが振ってくるパンチに、カウンターを合わせることができるんじゃないかな」

 ただ、ネリの一発に怖さも感じているようだ。

「勢いに乗って、どんどん打ってくるのは怖いから、それをさせないようにしないと。勝負のポイントはディフェンスと距離感。

 ネリは長い腕を生かして、離れてボクシングをすると思う。もしもネリが勝つとしたら、早いラウンドじゃないか。ネリはスロースターターではない。パワーもあるし」(前同)

 畑山氏は、後半勝負と予想する。

「井上が8ラウンドぐらいまでにKOするでしょう。ネリは一発パンチがかすれば、腰が引けてしまうんじゃないか。でも、さすがに井上も階級を上げてからは、以前のように一発で倒すイメージは薄れてきている。前半にダメージを蓄積させて、後半でKOでしょう」

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