●日本的アイドル文化は変わるのか?

 こうしたタイプのオーディション番組が増えてくると、ひとつ気になるのは日本のアイドル文化への影響だ。

 これも最初に書いたが、日本のアイドル文化は未熟でも成長するために努力する姿を応援するものとして発展した。アイドルとはずっと未完成なままであることに魅力の源泉があるようなものだった。年齢に関係なく「カワイイ」が称賛の言葉になるのがアイドルの世界である。

 一方で韓国のアイドルは、よく指摘されることだが完成されたものを提供しようとしているように見える。メイクの仕方を含めた容貌にしても歌やダンスのパフォーマンスにしても、成熟した完成度の高さが追求されている印象が強い。韓国への影響力が強いとされる欧米流のショービジネスの論理から言えば、それがプロフェッショナルのあるべき姿であり、当然ということだろう。

 そしていま、ベクトルとしては対照的な二つのアイドル文化がオーディション番組を通じて出会った。TWICEは台湾も含めた3か国、IZ*ONEは日韓の混合チームである。

 当然アジアの広大なマーケットを視野に入れたビジネス戦略としての意味合いも強いだろうし、別に国籍がアイドルとしてのタイプを決めるわけでもない。日本人でも韓国流のアイドルに向いているひともいれば、逆のパターンもあるだろう。

 また『PRODUCE48』でも、レッスン風景など裏側での努力の部分やそこに顔をのぞかせる受験者たちの人間的魅力を視聴者は見ることができた。その点では、『ASAYAN』など日本のオーディション番組との本質的な違いはないとも言える。

 しかしそれでも、こうした交流のなかで世界でも独特とされてきた日本のアイドル文化が果たして変わっていくのかどうかは興味深い。

 秋元康プロデュースによるIZ*ONEの日本デビュー曲「好きと言わせたい」は2019年2月にリリース。2月5日付オリコンデイリーシングルランキングでは1位となり、193,469枚の売上を記録した。これは日本デビューしたK‐POPガールズグループの初日売上としてはTWICEを超え史上最高とのことだ。すでに各局音楽番組での披露も始まっていて、まずはその反響に注目が集まる。果たしてこの“実験”もまた、アイドル革命史の新たな一ページを刻むことになるのだろうか?

※画像はIZ*ONEのシングル『好きと言わせたい』(WIZ*ONE盤)より

平成アイドル水滸伝

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