衰退する「エロ」や「ギャル」~AKBグループと坂道シリーズの台頭

 そして迎えた2000年代、グラドルの存在は定着し、ほしのあきら百花繚乱の時代を迎えた。だが彼女たちは、先ほども書いたように雛形あきこや優香が築いた本来のグラドルとは逆行した。「グラビア一筋」的な価値観が強まり、逆に全体としては先細りになってしまった感は否めなかった。

 代わってグラビアを席巻したのが、2000年代後半になってブレークしたAKBグループ、さらに現在の坂道シリーズのメンバーたちである。

 この現象、アイドル歌手の復権という意味で昭和への回帰にも見えるが、そうとも言い切れない。確かに雑誌の表紙やグラビアをアイドル歌手が毎号のように飾る状況は、昭和を彷彿とさせる。

 しかしこの場合、グラビアは副業という見方は必ずしも当てはまらない。前回、バラエティの才でAKB48のトップに立った指原莉乃の話をしたが、歌手という大枠はあるものの、AKB48そのものは大人数であることを最大限に生かしたゆるやかな分業制になっているからである。

 たとえばかつての「神7」のひとり小嶋陽菜は、グループ最年長になる30歳直前まで“グラビア担当”として貢献した。誤解を恐れずに言えば、彼女は“グラドルっぽいアイドル歌手”だった。雛形あきこや優香のような個人のグラドルは、グラビアを卒業してドラマ、バラエティへと“線”で進んでいかざるを得なかったのに対し、AKB48ではそれぞれ得意なメンバーが“面”を広げるように同時多発的に活動を展開していく。そしてそれはすべて、「AKB48」の実績になる。そうなると個人営業のグラドルは多勢に無勢、結局は「グラビア一筋」を掲げて牙城に閉じこもらざるを得なくなる。

 坂道シリーズも基本は同じだ。ただグラビアの占める比重は、AKBグループよりもさらに高めだ。白石麻衣の写真集『パスポート』が発行部数30万部を突破し、長濱ねるのファースト写真集の初版発行部数が12万部というからその勢いはすごい。SUPER☆GiRLSの浅川梨奈も大胆な水着グラビアで人気だが、写真集売上では及ばない。

 おそらく「エロ」や「ギャル」が隠し味でさえもなくなり、より純度の高い「清純派」(いわゆる「透明感」)にいま時代の針が振れているのだろう。それが、坂道シリーズについてよく言われる同性支持の高さにもつながっているに違いない。

 ではそもそも「エロ」や「ギャル」が衰退したのはなぜか? これはグラビアだけに収まらない大テーマなので、それについてはまた回を改めて。

平成アイドル水滸伝

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