■異質な他者が理解を始める糸口

 校内の新聞部に所属する設定の堀は、記事取材の一環として同じ学校の女子生徒(秋月三佳)にインタビューをしている。相手の女子生徒は会話等のディテールからセクシュアルマイノリティであることが示唆されるが、堀が演じる生徒はそのことを認識しつつ、いくぶん無邪気な率直さ、そしてそれゆえの不躾さでセクシュアリティに関する質問を相手に投げかける。

 やがて、それまでインタビューを受けていた相手の生徒が堀を捉え返すように、立て続けに問いを投じる。それは堀が演じる生徒の非礼を指摘するものであると同時に、堀自身が内に秘める決意や目標を引き出す、逆インタビューの契機でもあった。

 この逆インタビューは物語上の重要な転機であり、また同シングルがリリースされた時点において、主役を務める堀自身が置かれている立場が重ね合わされてもいる。相手からの問いに答えてゆく堀の言葉は、グループ本体の活動に初めて本格合流する2期生、それもシングル表題曲のセンターポジションを背負う、乃木坂46メンバーとしての彼女を紹介する機能を持っている。

 しかしまた、そうした新メンバーの紹介が目的化するのではなく、異質な他者同士が相互を理解し始める糸口を描いたドラマとしてこそ、『MILK』という作品の美点はある。

 柳沢翔は以後も長きにわたって乃木坂46のドラマ作品を手がけていく。そしてそれらの作品中では、異質な他者同士あるいは分断された二者が対峙し、互いに手を伸ばし合うような瞬間を描き出すような物語をしばしば生み出してゆくことになる。
 

乃木坂46「個人PVという実験場」

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