■アイドルシーンが持つ特質を浮き彫りにする瞬間

 ただしまた、この筋立ては乃木坂46あるいは現行アイドルシーンにあって、しばしば異端的なパーソナリティをもつ者と目されてきた橋本と、アイドルというジャンルとの距離感を比喩的に映し出す作品として読み取ることもできる。

 橋本の言動や立ち振舞は、「アイドル」としての人生とその前後の人生とをごく自然に、地続きにつなげてみせるようなスタンスを垣間見せるものだった。それはひとつのライフコースを生きる主体としては、きわめて自然な認識でありリアリティであるはずだ。

 そうしたスタンスを当たり前に見せ続けた橋本がアイドルのうちにあっては「異端」に映っていたとすれば、それは翻ってアイドルシーンというものがもつ特質、あるいは異常性を指し示すものでもあっただろう。

 相互に異質であることを認識しながらも二者が共存の瞬間を迎えることができた直後、静かにそしてあっけなく主役が消え去ってゆく。その幕切れは、橋本の示した軌跡と重なり合うことで幾重もの意味を含み、意義深いものになった。

乃木坂46「個人PVという実験場」

あわせて読む:
・現役アイドル前田美里が心の中で一番気になっていたメンバーは⁉【写真55枚】「坂道が好きだ!」第16回
・乃木坂46松村沙友理の驚異のプレゼン能力をバナナマン設楽が大絶賛!

  1. 1
  2. 2
  3. 3