■後年のテーマの萌芽がすでに存在していた

 フィクショナルな世界設定を用いながら、分断によって人々が統治される空気感を描く筆致には、後年の乃木坂46×柳沢翔作品に一脈通じる要素を感じることができる。ただし一方で、まだキャリアも浅く若い段階の乃木坂46だからこそ似つかわしいような、目の前の壁をストレートに克服してゆく少年少女たちの小気味よい活躍が表現されてもいる。乃木坂46メンバーたちの今日のパフォーマンスと比較することで、役者として初期段階にあった彼女たちの来歴をあらためて見返すこともできるだろう。

 もちろん、物語の世界観に呼応した衣装や小道具の繊細さなども含めディテールへの気遣いによって、「シャキイズム」MVがそれ単体で名作たりえていることも間違いない。しかし同時に、映像作家と継続的に関わりを築いてきた歴史を踏まえて初期作を見返すことで、あるクリエイターがどのような想像力やモチーフを乃木坂46に託してきたのかという文脈を、見る者がそれぞれにみつけることもできる。乃木坂46が編んできた膨大な映像作品群には、そんなイマジネーションのための道筋が無数に隠れている。

乃木坂46「個人PVという実験場」

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