■ステレオタイプな「完璧」さを持つ人物が「敗北」していく

 9枚目シングル『夏のFree&Easy』」に収録された白石の個人PV『完璧と敗北』もまた、彼女が体現する非の打ち所のない存在感を前提に、その「完璧」さからの落差が表現された作品だった。

https://www.youtube.com/watch?v=rLXiM1CQh0A
(※白石麻衣個人PV「完璧と敗北」予告編)

『完璧と敗北』は、乃木坂46のデビュー時からMVを継続的に担当し、スタイリッシュなビジュアルイメージづくりに貢献してきた丸山健志が監督を務めている。この作品で白石が演じるのは、全方位的にハイスペックであることを自認し他者への評価も厳しい、「完璧」な人物のステレオタイプである。

 そしてストーリーの肝は、そのハイスペックな人物が、当初は見下していた相手に徐々に翻弄され、やがてメンタルがほころび「敗北」するところにある。ここに表現されるのもやはり、「特別な存在」であることの晴れやかさではない。一見弱点がないはずの人物とネガティブな状況を重ね合わせ、当人のパーフェクトさゆえにその負の側面が際立つような起伏である。

 この作品が収録されたシングルの表題曲『夏のFree&Easy』MVでも監督を務める丸山の鮮やかな色彩と、グループのシンボル的メンバーである白石とのタッグは、表面的にはきわめて華やいだメジャー感を醸し出している。

 ただし同時に、白石麻衣という演者を通して、「特別な存在」であることと背中合わせの負の局面を描こうとする志向が、この時点ですでにうかがえる。翌年に『Doll』、翌々年に『白石麻衣似の多田敦子』が発表されることを思えば、「完璧と敗北」はそうしたテーマ性を描く、ひとつの端緒だったといえるかもしれない。

乃木坂46「個人PVという実験場」

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