現実とは、人々が常に何がしかのロールを上演することによって、いわば演劇的に作られていく。また、「表/裏」の境界が曖昧になり、互いに侵食していくようなメディア環境が前提となった今日のアイドルシーンにあっては、そうした二元論で何かを把握することはなおさら適当でない。

 他ならぬ松村がキーパーソンを演じた2015年の乃木坂46の舞台『じょしらく』(演出:川尻恵太)でも描かれたように、「演じる」ことの意義や複雑さをロジカルに示してみせる仕方はいくつもあるはずだ。

 しかし、本作「うそつき」の凄みは、そうした理屈による反駁とはまったく異なる方法で、アイドルへの粗雑な偏見を睨み返す点にある。

 作品終盤、松村は引き続き、細かな「嘘」を媒介にしながらも、同時にアイドルとしてのとあるストレートな振る舞いを披露することで、「嘘/本当」の単純な二元論を超越していく。そしてあくまでコメディとしてオチをつけながら、前半までの口論が前提にしていた価値観を確実に乗り越えてエンディングを迎える。

 松村がここで体現しているものは、相手の偏狭な言葉に対するストレートな反論ではない。しかし、「嘘/本当」にこだわる相手の価値観を軽やかに無効化し、己の側に取り込んでしまうそのありようは、アイドルのスペシャリティによってこそ可能になったものだ。論理的な言辞をいくら連ねても決して到達しえない「アイドル」の説得力が、「うそつき」には込められている。

乃木坂46「個人PVという実験場」

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