可笑しみのあるやりとりのうちに、若者は不器用ながらも、霊である桜井をたしかに「存在」するものとして扱い、彼なりのやり方で敬意を払う。その様子に桜井も心を開き、両者の関わりは一歩深まったものになる。

 けれども、霊としての桜井の心が晴れてゆく瞬間はまた、彼女がこの世に残留する必然がなくなってゆくきっかけでもある。当初はオーバーに感情を表出していた霊がわだかまりをほどき、穏やかな心持ちになっていくまでの過程が、もとより演技力に長けた桜井の振る舞いによって、豊かに表現されてゆく。

 やがて、コインランドリーに残される若者と清掃スタッフの二人。若者と桜井とを繋ぐ通訳であった清掃スタッフは、彼に対して優しい嘘をつき、二人の仲を疑似的にとりもってみせる。そして、桜井がいまだその場にいると想定しながら、彼女の振る舞いを描き出していく。

 それはまた、亡くなった者のありようを解釈し位置づけるのは常に現在生きている他者であるという、生死をめぐる普遍的な光景の一片を示すものでもある。

乃木坂46「個人PVという実験場」

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