かつて転校前に通っていた学校を西野が訪れ、若月とのひとときの再会を予感させて幕を下ろすこの作品によって、「無口なライオン」から始まる物語は完結を迎える。もっとも、ペアPVという枠組みではありながら、この「インスタントカメラ」では西野と若月が同時にフレームに収まる瞬間はない。けれども、小道具を介して二人がすれ違うようにリンクしながら、やがて共通の場所へと足を運ぶクライマックスは、西野と若月をメインキャストに招いたドラマとして十二分に贅沢さを感じさせる。

「無口なライオン」シリーズの物語は、9~11枚目まで乃木坂46の3作のシングルリリースをまたいでつづられていった。それは、乃木坂46がメンバーたちに「演じる」機会を作りながら、いかに豊かな映像制作の土壌を生んでいるのか、その一端を知らしめるものだった。

 また、MVから個人PV、ペアPVへと多岐にわたる企画のなかを泳ぎながら、時のうつろいが映し出すさまざまな側面を鮮やかに紡いでみせる、湯浅の作家としての個性が強く発揮された連作でもあった。

乃木坂46「個人PVという実験場」

あわせて読む:
・坂道グループ初の写真集『乃木坂派』に見るアイドルの「リアル」と「演出」の交錯
・乃木坂46白石麻衣の卒業シングルで選抜復帰した1期生のコメントがエモい!
・乃木坂46金川紗耶「0点のテストを満点のように自慢する」超ヤバいキャラが見つかる!

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4