伊藤と井上の二人が母校に入り込み屋上を再訪する場面は、明確に「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」MVのリフレインである。かつてとは伊藤と井上の立場を逆にしたようなこのシーンでは、二人が演者として確実に成熟しているさまが見て取れる。それだけに、グループ内での彼女たちの立場とストーリーとが二重写しになるような切実さも、一層強く感じ取れよう。

 乃木坂46における湯浅弘章のフィルモグラフィーをたどるとき、グループがもつ映像制作の土壌の広さを巧みに駆使しながら、時のうつろいが喚起する哀感や郷愁、また限られた時間にこそ宿る尊さを表現し続けていることがみえてくる。そしてなにより、演じることに重きを置く乃木坂46にとって、湯浅の作品群はグループのアイデンティティを支える重要なパーツとなっている。
 

乃木坂46「個人PVという実験場」

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