その大園が俳優として次の段階に入ったことを思わせるのが、22枚目シングル『帰り道は遠回りしたくなる』収録の個人PV「あね おとうと」(監督:佐藤克則)だった。

https://www.youtube.com/watch?v=DEUKGQTe4kc
(※大園桃子個人PV「あね おとうと」予告編)

 両親のいない家のなかで午後を過ごす姉(大園)と弟(望月春希)。姉の指に刺さった植物の棘を弟がピンセットで抜こうとするうち、ふとした瞬間に二人のあいだに予期せぬ刺激が走る――。

 先にみた「バージン・ブリーズ」が、ぎこちない関係の内にも親子の繋がりを描いていたのに対し、この「あね おとうと」では親の存在はほとんど喪失し、戻ってくる予感は皆無に等しい。大園演じる姉が無為に弄んでいるのは、「もとに戻らない」ものの象徴としてのドライフラワーである。やがて、取り残された姉と弟との間に不思議な思慕の関係が生成し、それに呼応するようにドライフラワーにも変化が起きる。

 二人の微細な距離を静かに描き出す本作において、大園は頼もしさと触れがたさをたたえた安定感をもって姉を演じている。初の個人PV「バージン・ブリーズ」でみせた歪な魅力のありようからは大きく跳躍した姿がここにはある。「バージン・ブリーズ」から「あね おとうと」まで一年半余り、一貫してドラマ型作品を担ってきた彼女の足跡をたどるとき、演技者を涵養する場所としての個人PVの意義と面白みが見えてくる。
 

乃木坂46「個人PVという実験場」

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