もっとも、「Weekend」と同じ2018年、頃安が吉田綾乃クリスティーとタッグを組んだ作品では一転、思いが成就しない者を描くドラマ作家としての彼の手腕が存分に発揮されている。

https://www.youtube.com/watch?v=0THwesx62_s
(※吉田綾乃クリスティー個人PV「一ヶ月前、春のうた」予告編)

 別れた元恋人の部屋に自分の荷物を取りに行く役を吉田が演じる「一ヶ月前、春のうた」は、これまで頃安が個人PVに託してきた「報われない者たち」の物語を、新たなメンバーに橋渡しするような要素をもつ。

 同一ロケーションのうちに、ほんのわずかに異なる時間軸の記憶を交錯させ切なさを倍加する筆致も、哀感の中にどこか爽やかさを残す後味も、ドラマ作家としての頃安が乃木坂46の映像コンテンツで表現してきたエレメントである。

「アイドル」という存在をめぐる複層的作品も、あるいは時にみせるあやうい人物像の描写も、頃安祐良という作家の重要な一面といえる。ただしまた、俳優を輩出する場としての乃木坂46を考えるとき、頃安が1期メンバーを通じて継続的に描いてきた繊細なドラマが後輩メンバーへと継承された、「一ヶ月前、春のうた」という作品のもつ意味は小さくないはずだ。

乃木坂46「個人PVという実験場」

あわせて読む:
・現役アイドル前田美里「今泉佑唯のピーチ・ジョンアンバサダー就任が嬉しかったです」【写真38枚】「坂道が好きだ!」第37回

  1. 1
  2. 2
  3. 3